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2020.07.10

山頂の怪

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山頂の怪

山頂の怪

これは2018年8月に三重県三重郡菰野町にある御在所岳(標高1,212m)
という山に登った時に起こった、本当の話です。

5:30
この日は快晴に恵まれ、これから出会う試練や美しい景色を想像し、
心躍らせながら駐車場に到着した私は、装備を整え登山口に向かいました。

御在所岳はロープウェイで山頂まで行け、山頂付近には立派なレストランなどの施設もあることから、
登山者のみならず家族で遊びに行ったりと、鈴鹿山脈の中でも広く親しまれている場所なのではないでしょうか。
山自体の標高は高いわけではありませんが、登山ルートも複数あり、
また、鎖場なども多く、バリエーション豊富で登山者にも非常に人気の山です。

この日は私も、そんな御在所岳の懐の深さを味わうべく、
登りと下りで違うコースを辿るルートを考えていました。

登りは、やや急な岩場を登り降りしたり、見所豊富でアスレチック感覚の強いルートを選択。
下りは、急峻な場所はないのだけど、距離が長く、沢沿いの岩場をひたすら降りていく体力を使うルートを選択しました。
登り口と降り口が違うので、駐車場まで数キロの歩いて戻ります。

御在所岳は人気の山なので、人が多い日には鎖場手前などで行列ができることもあるようですが、
学生は夏休みに入っているはずの時期にも関わらず、この日私が駐車場に着いた時には人の姿はなく、
静かな山を単独で登るのが好きな私には幸運な日に思えました。

6:00
登山口から順調に登り進み、山自体の地形を味わい、
山から望む伊勢湾の美しさなどを独り占めし、心配だった崖や鎖場も攻略していきました。

8:00
カメラで写真を取ったりしながらでしたがほぼ標準タイムで、
頂上付近の整備されたエリアにたどり着くことができました。

実はこの時、頂上付近に近づくにつれ、御在所岳と同じく中部地方の非常に人気の高い山で、
日本百名山の一つ、伊吹山を以前登った時のことが頭に浮かんでいました。
伊吹山はあまりバリーションの無い、ひたすら斜面を登っていく体力使う系の登山で、
「やっと頂上についたー!」と思ったら、そこにはものすごい人。
伊吹山は頂上付近まで車で行けてしまうので、
自家用車で眺めを見に来るような観光目的の人たちもたくさんいたのでした。
自力で登ったこちらからすると少し白けてしまう瞬間ではあります。

御在所もロープウェイでさーーーと上がってくる人たちでいっぱいなのかな…と、
この日はガッカリしないように覚悟を決めていたのでした。

8:30
しばらくアスファルトで整備された道を歩き、展望台の方に向かっていくのですが、どこにも人の姿がありません。
そういえば、そもそもこの日駐車場から誰にも会っていません。

建物の中にも人の気配はなく、ところどころに重機がたたずんでいるのみです。
喉の渇きを自動販売機のスポーツドリンクで潤し、糖分が脳に巡っていくにつれ、
「これは異常な状況なのではないか」という予感がしてきました。

8月前半のこんな天気の良い日に、この御在所岳に、“誰一人”いない。
進んで行くと「回り道 この建物に入る」と、施設の中に誘導する看板が現れました。

建物に入る前に、回りを見回し耳を澄ませてみると、
風に吹かれた重機のワイヤーが「カーン…カーン…」と音を立てる以外音はせず、
生きているものの気配は感じませんでした。

看板に従って施設内に入り、アンデッドの気配を背中にうっすらと感じながら、
私はそれでも一等三角点を目指しました。

一等三角点からロープウェイ乗り場を見下ろすと、
茂みの中からアンデッドの群れが走ってくるビジョンが脳裏によぎりました。
こういう時の私の勘はかなりアテになるのですが、
嫌な予感がした私は生存者を探そうとロープウェイ乗り場にまっすぐ向かいました。

設備の近くに着くと、赤茶けた設備の老朽化が目につきました。
私は「破傷風には気を付けろ」、と自分にささやきました。

9:00
ロープウェイ乗り場に着く私を誰かが見ていたかのように、急にロープウェイのリフトが動き出しました。
私は、猫のようにいつでも走りだせるような態勢を維持しました。
今思えば、この状況で写真をとっていた自分の冷静さに驚きます。
乗り場につくと、そこにあった看板に目が釘付けになりました。

「ロープウェイ 営業開始 9:00」

この世の隙間に一人取り残される覚悟を決めたばかりでしたが、
誰もいなかったのはロープウェイの営業時間前だったからでした。

登山をしていると、このような不思議な体験がたくさんあります。
また一つ生き残るための経験を積んだ一日でした。

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